東京外濠(市谷濠、新見附濠、牛込濠)では、夏季にアオコの大量発生による水質の悪化、臭気や景観障害が発生しています。2020年からアオコ対策方法の検討を行い、2021年~2022年にかけて水質改善処理剤の散布、アオコ拡散抑制のためのフェンス設置等の対策を行いました。
水質改善処理剤の散布
アオコ拡散防止フェンスの効果(牛込濠)
水質改善処理剤の散布効果(牛込濠)
ダム貯水池で藍藻類により発生するアオコ、カビ臭などの水質障害に対し、原因藻類の正確な同定とその増殖機構を解明し、発生抑制方法を検討しています。
アオコを形成する藍藻類の中には、異なる環境に適応した様々な種が含まれている。 アオコの抑制対策を行うためには、原因種を明らかにし、その増殖特性を考慮した検討が必要です。
かび臭の原因となる植物プランクトンを環境DNA技術により特定することで、より効果的・効率的な水質保全対策を提案します。
かび臭を生成する植物プランクトン(藍藻類)の識別は、顕微鏡による分析では困難であり、ダム貯水池や湖沼におけるかび臭現象の解明および対策手法の検討のネックとなっていました。このことから、環境DNA技術を用いてかび臭原因藻類を識別・特定できる解析手法(網羅的解析・種特異的解析)を開発しました。
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解析法 | 網羅的解析(定性) | 種特異的解析(定量) |
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解析手法 | メタバーコーディング | リアルタイムPCR |
解析の特徴 |
藍藻綱に共通する遺伝子を対象とするため、幅広く生物種を検出できる。 そのため、水域に出現する藍藻綱を網羅的に検出でき、生物種リストを作成しやすい。 |
かび臭生成藍藻類に特異的な遺伝子を対象とするため、それ以外の藍藻綱には反応しない。 そのため、対象としたDNA増幅量をモニタリングすることで、かび臭生成藍藻綱のDNA量を定量できる。 |
解析対象とする遺伝子地域 |
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・16S-23S rDNAのITS領域 |
環境DNA技術では、顕微鏡分析では確認できないような低密度であっても検出することができるため、かび臭原因藻類などの出現状況を精度よく監視することができます。
顕微鏡では識別できない細胞形態が類似した植物プランクトン(藍藻類)が複数種混在していても、かび臭原因藍藻類に特異的なDNA領域をターゲットとすることで、かび臭原因藻類のみを定量化することができます。
16S-23S rDNAのITS領域によるかび臭原因藻類と非原因藻類の識別
環境DNA技術によるかび臭原因藻類の出現傾向や発生状況と環境要因との関係を分析することで、かび臭原因藻類の発生要因を明らかにし、その観点から有効な抑制対策を提案します。
かび臭原因藻類の出現傾向と環境要因との関係